昨日の帰り、会社内でのこと。
事務所からの途中で転倒し、そのまま1時間ほど地面の上に大の字になっていた。
事務所から移動する車から降りる際、降りれる自信がちょっとなかった。
その車両は始めてるのもので2列目の座席がスライドせず3列目がとても狭く、左足の感覚が無いため足を上手く動かせず引き抜くことが出来ない。
転倒の恐れがあったため捕まることが出来る場所を探すが何もない。仕方ないので運転席ドアノブを右手で掴むがドアが開き、それに引きずられるように横に回転しながら地面に転倒した。
『やはり』、と思った。車内で2列め座席を左膝にぶつけられ、荒い運転で首も痛め、さらに隣に座った人の肘打ちを左腕に受けていたからだ。
同僚が声をかける。
同僚「どうすればいい?」
私「どうしようもない」
同僚「分かった、帰るから」
そう言ってその場にいた同僚二人は去っていった。
実際問題発作等が発生してすぐは激痛で触られるのも辛いことが多く、今回のはその感触から首と左腕がやられていることは分かった。しかし少しして落ち着けば這いずって動ける可能性がある。
だから大して心配もしていない人にそばにいられても不快だし、どうせまた『嘘』だと思われるぐらいなら一人で苦しんだほうがマシだと思った。
あと二人、事務所にまだ残っているのは知っている。その二人に発見される可能性がまだ残されている。
ひとまず体がどうなっているかをチェックした。
首は…意外に動く。動かせないわけではないらしい。
右半身に以上は無く、やはり問題は左半身。
左腕…麻痺して動かず。強い痺れが左の首~肩~腕~指先を覆っていて感覚もない。
左脚…動かず。感覚なし。痺れは感じない。
左腕と左脚を触ってみようとするが、ここで体が捻られないことに気付く。
やばい…胴体の左側も動かなくなっている可能性がある…もしそうなら体をよじることも撚ることも曲げることも出来なくなる…人の体は健康な人が思っている以上に左右ありきで動くように出来ていて、胴体の左が動かねば右に問題がなくても胴体そのものが動かせなくなる。寝返りも起き上がりも出来なくなる。
その予感は当たっていて、まったく体が動かせない。地面に背中を付けたまま右腕と右足をバタつかせるしか出来ない。
不運にも、近くに掴んでよじ登れるような掴めれるようなものもない。せめて立てればなんとか歩けるかもしれないのだが…
このままある程度動けるようになるまで、このぐらいの状態だと経験上最低でも3時間、下手すれば半日。3時間でも体が冷えすぎて動けなくなっているかもしれないし、朝日が拝める頃には低体温症をはるかに超えているのかもしれない。
普通の人は地面に寝たことなどないだろうから分からないと思う。
地面は人の熱を奪う。特に今の季節は何時間も地面に寝転んでいれば風邪を引くなどというレベルではなく、用意に低体温症にもなるし、凍死だって不思議ではない。
べつにそれもいいかなと思った。
2008年に事故に遭い、後遺症に悩まされ、金もなく何年も暖房無しで暮らし、病院代を稼ぐために無理して働こうとしても交通事故に遭ったことを理由に断られる。
肉体労働はダメだと意思に言われていたがそんな仕事しかなく、いやそれすらほとんどなく、やっと就いた仕事でも何度も倒れて迷惑を掛けた。
借金ばかりが膨らんで、今の会社に務めるようになって何事も無ければ長い期間を掛けてだけれども返済できる可能性が見えてきた。しかしそれまで体が保つのかには自信がない。
他に聞いたことがないような症状ばかりで私を嘘つき呼ばわり、仮病や詐病呼ばわりする人もいる。同僚にもいるし、医療関係者にもそれはいる。
だから死んでもいいかなと思った。ちゃんと眠れるならそれもいいと思った。
どんどん体が冷えていく。おそらく左腕と左脚はとんでもなく冷たくなっているでさろう。普段からして冬場はそうなのだから、この時期の青森の山の中の夜は冬と大差はないのだから、なっていないほうがおかしい。
車のローンとか借金を返しきらずに死ぬのは申し訳ないし、家もゴミ屋敷のような状態で残すのはすまないと思うが、これはもう私だけの力では助からない可能性が高いとしか思えない。
試しに車を叩いてみる。誰も来ない。
そう言えば右手に泥の感触があったけど、車に手形が付いていないか見てみる…いや、見れない。首が右に曲がらない。
上下と左には動くけど、右には動かない。時間経過で回復どころか悪化しているかもしれない。
まぁいいか。
右半身がどんどん冷たくなってくるのが分かるが、左半身は何も感じない。動かそうとすれば痛むだけ、痛むだけで動きもしない。
死んだら仕事にも穴を空けるな、申し訳ない。
「会いたい」
と言葉が出た。たまに勝手に口から出る。「痛い」「苦しい」「辛い」そして「会いたい」。
こんなになって死ぬのも怖くないのに、そんなことが口から出て悔しかった。病院にも行ってないくせに。
ここで死ねば会社に迷惑がかかると思った。
助からなくてもいいけれど、いちお助けを求めるふりをしなくてはと思った。
私は車と車の間に倒れている。残っている二人に気付かれない可能性がある。
かと言って何が出来るだろう…カバンは車内で手元には何もない。車道に投げるものすら…いや、眼鏡と腕時計と長靴がある。
運転している人に気付いてもらえそうなのは、サイズ的には長靴。光の反射を考えると眼鏡や腕時計にも可能性はあるが、踏み潰されるだけの可能性が大だ。
右足を曲げて右手が長靴に届いた。変な場所にいかないように慎重に脱いで手元に。
頭上の車道に目掛けて投げるが、近過ぎは見えないし、遠すぎても気付いてもらえない。
でも考えていてもどうにもならないので、勘で投げてみる。どこに飛んでいったかは見えないので分からない。
幸いなのか何なのか、私は転倒から1時間後、残っていた二人に発見されて助かった。長靴がちょうどよいところに落ちてくれていたようだ。
一晩経っていちおう動くようにはなったが、後遺症でただでさえ狭い可動域が普段よりも狭く、そして痛みも酷く、左腕全体の痺れも強いままだ。
いろんなことが悔しい。