車をどうするか、ふたたび

ある日突然事故に遭い、運ばれた八戸赤十字病院ではちゃんと診てもらえず、仕事ができない体となり、これからの見通しがまるで立たなくなった。
しかし事故に遭った車の支払いはまだこれからだ。

事故に遭った車はスズキのパレット、その年の1月に販売開始されたばかりの車で、私は真ん中のグレード…Xかな?を購入していた。
フルタイム4WDのターボ車で、片側電動スライドドア。色はアズールグレー。祖父母を病院に連れて行く際に病院前に横付けしてもドアを開けやすいスライドドア、さらに運転席からでも開閉出来る電動スライドドアを選択した形です。
3月の初めの方に納車され、約半月で事故に遭い、これからどうするか…

修理して乗り続けることはもう諦めていた。これから仕事が出来る、出来ないに関わらず、次の車検が通る保証がない無理矢理な修理で3年後の車検時に手放す可能性があることはキツイと考えたのだ。

実家の方からは「同じ車を買え」と言われている。パレットだと祖父や祖母が自力で乗り込めない場合でも、抱えて乗り込めるほどスライドドアが大きく開き、車内も天井が高く広いため介助する側、される側、共に楽だと考えたからだろう。

ディーラーからは「同じ色だとかなり時間が掛かりますが、シルバーなら仮押さえ出来てるので1か月後には納車出来ます」と言われている。

教職員共済からは「とにかく早く決めて欲しい」と、そればかりだ。

私としては金銭的負担を軽くするためワゴンRの低い方のグレードにしたいのだが(10万円以上は軽く違う)、どうも周りはパレット推しが多いようで…たしかに祖父母の通院には便利だろうけど…私の事情で言えばなんなら体が動けるようになるまで車なしでもいいぐらいなのだが…
実家では「もし支払がきびしくなってもこちらで出してやる」とまで言ってくる…祖父母の介護は全て実家が引き受ける、という話はどうなったのだろう…祖父母の通院は何故私まかせにしようとするのだろう…

ひとまずこの時点で、パレットかワゴンRの二択にはなっていた。買っても運転できるか怪しいのだが…代車の運転もかなり危なっかしいし…めまいに吐き気、車幅感覚が戻ってこない状態の運転でだいぶゆっくり走っているのだが…

残る問題は、何処にお金を当てるか、だ。

教職員共済や実家は、廃車にする車の支払いを続けて、買い直す方を教職員共済からの支払いで済ますことを勧めてくる。
私には事故に遭った車両を教職員共済に精算してもらった後に、新たに自ら車を購入する方がシンプルで後腐れがないと思えるのだが…私の感覚がおかしいのだろうか?

でもやはり、八戸赤十字病院にて嘘つき扱いされ診察も検査もしてもらえないことが私の頭から離れない…いや、毎日毎日、いつでも体が不自由だから、治療をどうすればいいのかと、そればかりが頭を埋め尽くす。

正直、もう車など要らないという気持ちが1番強かった。

嘘つきの定義

「お前は嘘つきだ」

と面と向かって言うことはまずない。

たいていは

「そんなことありえないと思うけどね」
「他の人はそんなこと言っていないよ」
「まぁ気にし過ぎないで気楽に」

と言う言葉の裏で

「そんなまずありえないこと言うなこの嘘つきが」
「他の人は言ってないんだからお前の嘘に決まっている」
「実際はそんなことないのに被害妄想で騒ぎやがってこの嘘つきが」

と言っている。

自分で書いていても、ありえない対応の連続に思う。

加害者の任意保険(教職員共済)からいきなり電話で、
「そこにいたあなたにも責任があるじゃないですか」
と言われる。状況も確認しないままにそう言われる。

運ばれた病院の指示に従い翌日行けば
「そんなこと言うはずない」
と私の聞き間違いと決められる。確認してのにそう言われて、それも言うはずないと言われる。

医師には
「1番軽症なのに大げさに痛がっている」
との旨言われる。まるで当たり屋のように扱われ、症状を否定される。

「嘘つくな」とは言われていない。たしかにそんな単語は言葉は使っていない。
でもこちらの説明を否定して自分の描いたストーリーを押し付けるのは、こちらを否定しているのとは違うのですか?

私がこれまで書いてきた中で、看護師に、医師に、教職員共済職員に、嘘つき呼ばわりされたと感じています。

これから書く予定の中でも、沢山否定されてます。嘘つき呼ばわりされ、当たり屋やたかりの様に扱われています。

私の事故の過失はゼロでした。
でも仕事を無くしました。
働けるようになるにもだいぶかかりました。
働くのも以前とは違い、年に何度も労働不能になっています。
その状態で完治しない体で年に何十回も通院し、月に1万円以上支払い、毎日7種類18錠の薬を飲み、それでも動けない日があります。どの薬も痛み止めのためです。

その上でなんで私の話を、状況説明を、感じている痛みや苦しみを、否定されねばならないのですか?

そう言う暗に人を否定する者たちこそ、私は嘘つきといいたい。
自身が楽するために、優位になるために、他の人にツケを回す、それこそ嘘つきだと定義したい。

八戸赤十字病院へ

たったの1時間も働けなかった夜勤が終わった後、派遣会社への連絡を終えた私はその足で八戸赤十字病院に向かった。
今でこそ左手抜きでの運転にも慣れているが、その時はまだ右手だけでハンドルを回すことにも慣れず、停車後に右手でシフトチェンジすることも難しく、とても時間が掛かったことを覚えています。

病院内に入り受付を済ませると、毎度の如くにまたしばらく待たされる。
10時を過ぎ、「また11時を過ぎるんだろうな」と覚悟した辺りで、私は診察室に呼ばれた。

医師「はい、こんにちは。今日は何かな?」
私「昨日仕事行ったんですが、やはり無理でした。1時間と経たずに左腕が動かなくなり痛みにも耐えられず、何もできませんでした」
医師「…君さ、1番軽症なんだよ?なんでそんなこと言うのかな?」
私「なんでって…実際そうだからで…」
医師「前にも言ったけど、あの事故で君が1番軽症なんだよ。隣の車の子供は骨折してるし、他の人も君より重傷なのに、なんでそんなこと言うのかな?」
私「私はただ事実を言ってるだけで…」
医師「他の人に申し訳ないと思わないわけ?」
私「そんなこと言われても実際左腕は動かない、首も痛すぎて普段の生活も辛いんです」
医師「でもね、レントゲンにも異常はなかったんだよ」
私「あの時の医師は『専門じゃないので翌日詳しく診てもらいにきて』と言ってました。でも診てくれないじゃないですか?」
医師「レントゲン診れば分かるんだよ。君が1番軽症なのは。それに事故当日は左はなんともなかったじゃない」
私「だからその後におかしくなって、原因も事故以外に思い当たらないし、だから診て欲しいって…」
医師「分かった分かった、じゃあ注射しよう」
私「…注射ですか?」
医師「注射すれば楽になるから」
私「その前に検査とかしてもらいたいんですけど…」
医師「だからね、レントゲンに異常が無いんだから何もないわけだ。それでも辛いと言うから注射してあげるって言ってるてしょう」
私「…何の注射ですか?」
医師「とにかく駐車すれば楽になるから、他に異常はないんだし大丈夫だよ」
私「でも私の体は…」
医師「いいからまず注射受けなさい。悪くなることは無いんだから」
私「…それでも良くならなかったら診察してもらえますか?」
医師「レントゲンに写らないんだから診ようが無いよね?」
私「…じゃあどうすればいいんですか」
医師「まずは注射して安静にしよう。異常はないんだからそれでよくなるはずだから」
私「…」

この日も結局、検査などは行われなかった。
他の患者がMRIなどで診てもらえたのは私より重症だからで、それより軽症な私はMRIなど受けさせないと、そういうことのようだ。
私は検査を行い、その結果などから判断してから重症か軽症か診断するものだと思っていたが、医師の話から察するにそれは素人考えというものらしい。
仕方なく注射を受け帰宅する。

帰宅後、体に異常が起きた。注射から1時間ぐらい経った頃だ。
息が苦しく熱っぽくなる。首や左腕などの痛みが激しくなり痺れも強くなり、それらがまるで動かなくなる。
息苦しさと熱っぽさは数日続き、それがやんだ時には首と左腕は更にひどくなっていた。痛みも痺れも強くなり、前よりひどくなっているのは明らかなった。
でも私はもう、八戸赤十字病院を信じることができなくなっていた。
この日を最後に、私は八戸赤十字病院には行かなくなった。もう嘘つき呼ばわりされるのに耐えられなかった。

出社後のこと

事故後の出勤でろくに仕事も出来ずに迷惑を掛けた私は、朝一で担当に電話を入れた。

私「すいませんやっぱりダメでした」
派遣会社「え?」
私「仕事を始めて1時間と経たずに左腕が使えなくなりました」
派遣会社「えー?なにそれ困るよ!大丈夫だと言ったよね!?!?」
私「いえ、私は不安があると、腕がもたないかもしれないと、言いましたけど…」
派遣会社「でも医者は大丈夫って言ったんでしょ?」
私「ですから私はそれがおかしいのではないかと、私が医師に伝えたことを言いましたよね?」
派遣会社「いやでも君が大丈夫って言うから…」
私「…いえ、私からは大丈夫とは言っていません」
派遣会社「言い訳はいいから…それでどうすんの?」
私「とりあえず病院に行って診てもらいます」
派遣会社「そうだね、診察終わったら連絡頂戴」
私「あとそれで…仕事は無理だと思うんです」
派遣会社「いや、それは君が決めることじゃないでしょ、あくまで医師の判断で決めることで…」
私「今回医師の判断で仕事再開しようとして、結局は私が感じていたような結果になったんですよ」
派遣会社「そんなこと言われてもさ…」
私「実際苦しんでいるのは私なんですよ!分かります!?医師にも嘘つき呼ばわりされて、でも実際左腕が不自由で…トイレさえ大変なのに…」
派遣会社「分かった、分かったから、とにかく病院行ってきて、終わったら連絡して」
私「分かりましたけど…仕事は無理だと私は考えていて、迷惑掛けるので辞めたいと思っているんですよ」
派遣会社「いや、それはね、病院行けば良くなるかもしれないし、なんとか待ってくれるように話すから」
私「今日なんてほとんど製品作れなくて、材料無駄にして、ただただ朝まで痛みに耐えるだけで、出来るわけないでしょ?」
派遣会社「分かった、君が辛いのは分かったから、まずは病院行こう。辞めるかどうかはその後考えよう。いいよね?」
私「とてもまともじゃなくって…迷惑掛けたくないんですよ…」

このような話をして電話を切った。

派遣会社の担当は結局この後も、一度も事故の状況を聞いてくることはなかった。
ただ「働けないの?」「とうして働かないの?」の繰り返しで、その度に同じ説明を繰り返した。

もっと若い頃に大手の派遣会社にお世話になったことがあるが、このような扱いを受けたことはなかった。こちらの事情にも耳を傾けてくれて仕事が出来ていた。
それに比べて…地元No.1を自称していてもこんなもんなんだな、この会社は派遣社員を人としてあつかわず物のように考えているんだな、と落胆したのを覚えている。

事故後の初出社

事故後の初出社はいろんな意味でストレスだった。
派遣会社からは事故の説明を禁じられている。
でも派遣先ではおそらく、事故について聞かれないはずがない。
そもそも私の体がおかしいことを伝えねば、何かあったときに大問題となるのは目に見えている。

会社に到着すると上の人が待ち構えていた。
事故の状況や体のことを聞かれ、私は正直に話す道を選んだ。
こちらに過失がないこと、車は廃車になる可能性が濃厚であること、体に異常があるが医者には問題ないと言われたこと、包み隠さずに話した。
上の人は私の話をを信用してくれ、
「もし途中で具合が悪くなったりしたら、遠慮せずにすぐに作業をやめて休憩していいから」
と言ってくれた。ありがたい話だ。

現場に入ると、そこの上司が待ち構えていた。
何か言われるかと思ったが(普段からいろいろと指摘されていたので)、あまりこまごましたことは言わずに細かい注文もせずに、ケガの無いようにと言ってきた。
そして工場内は私一人になった。

私の仕事はマシン金属加工のオペレーター、のような仕事だ。夜8時から朝8時までラインを動かし、製品を作り続けるのが私の役割。その間、工場にいるのは私一人となる。

夜8時に私の仕事開始後、すぐに正社員は帰宅し一人となる。
首と左腕の痛み、不自由さはあるものの、最初の内はなんとか仕事をこなしていた。
しかし30分ほど経過した時、突然それは起こった。
左腕が動かない…指先も痺れが強まりうまく材料を掴めない…
右手でフォローしようとするが間に合わず、機械の中に材料を落としてしまう。
機械の停止を確認した後になんとか右手で拾い出すが、表面に傷が付き、もう製品にはならない。
再度材料をセットしようと試みるも、右手だけでは上手くはめられず落としかける。
悔しいがその機械での作業は断念し、小物の製品に注力しようとした。
しかしそちらでも不良品を出してしまう。片手で治具に押さえ付けながら固定具で止めるのだが、それが上手くできない。
動かない左手を肩を押し込む形で押さえてるが動かない左腕に集中しているものの固定する時に動いてしまい、製品の穴の位置がズレてしまう。
それを繰り返している内に痛みと痺れ耐えきれないほどになり、9時前には作業できなくなった。

今思えば不思議だが、あの時の私には夜間の緊急連絡先が知らされていなかった。これまでにも機械の不具合で朝5時近くに作業できることがなくなり、そのまま朝8時まで待つしかなかったこともあった。
派遣先がそうだし、派遣会社の担当に至っては午後8時どころかその前には電話受けてもらえないのが分かっているので、家に帰るわけにもいかず、ただただ朝の8時まで待機しなくてはならない。
痛いし辛いし苦しいし悔しいし、そればかりを繰り返し思って朝までただ耐えていた。

8時が近付き社員が出社し始める。
状況を伝えて謝罪する。
特に咎められることもなく「仕方ないよ」と慰めの言葉をいただく…情けない…。

こうして私のこの会社での仕事は終わった。

派遣会社への連絡

八戸赤十字病院で診察した医師の言葉を受け、その日のうちに会社に連絡した。
当時私は地元の派遣会社に所属し、市内の工業団地にある金属加工会社内で仕事をしていたため、派遣会社に連絡をする形となった。

私「医師から仕事をしても構わないと言われました」
派遣会社「そうか、よかった。代わりの人も見つからないし先方も困り果ててたんだよ」
私「それはすみませんでした…」
派遣会社「そもそもなんで事故なんか起こすかな?」
私「はい?…いやいや、私は事故なんて起こしてませんよ」
派遣会社「でも運転中だったんでしょ?」
私「たしかに車には乗っていましたけど、車は止まっていてこちらの過失はゼロだよと警察官からは言われてますよ」
派遣会社「そうは言ってもプライベートて事故やって休むとか、印象悪いからね、こっちも困るんだから気をつけてよ」
私「そうは言われても…止まっていた車に後ろから追突されたらどうしようもないですよね?」
派遣会社「僕なら前に動いてぶつからないな」
私「いやいや、後ろの車を弾き飛ばして追突してきて前の車に玉突きしてるので、逃げ場所もなかったんですよ」
派遣会社「とにかく派遣先に迷惑掛けてるんだから、とにかく謝って明日からお願いしますよ」
私「はぁ…とりあえずがんばってみますけど…」
派遣会社「なに?なんか歯切れ悪いけど?」
私「医師は何ともないと言うんですが、私は痛くて左腕がうまく動かないんですよ」
派遣会社「でも医者はゴーサイン出したんでしょう?」
私「そうてすけど、こちらが言っても『体を動かさないからそうなんだ』の一点張りで、まともに診てもくれないんですよ…」
派遣会社「だから平気だからそうなんでしょ?僕も同じ意見だけどね。だって当日自分で電話してきたじゃない」
私「それはまずは連絡しなくてはと思ったからで、電話掛けることは出来たからしたってだけで…」
派遣会社「とにかく、先方に迷惑掛けてるんだから、明日行ったらまず謝って、あとは余計なことを言わないようにね」
私「…余計なことってなんですか?」
派遣会社「体が痛いとかそういうことだよ」
私「でも実際痛いとか動かせないとかは言わないと現場でまずいと思いますが…」
派遣会社「医者が仕事をして大丈夫と言ったんでしょ?素人考えで余計なこと言わないでってこと」
私「…」
派遣会社「とにかく先方には明日から通常勤務に戻れるって伝えておくから、よろしくね」
私「いや、それはやってみないと分からないので、その辺りも話してはもらえませんか?」
派遣会社「…先方にどれだけ迷惑掛けたと思ってるの?社員の方々が君のフォローで残業してるんだよ?」
私「それは申し訳ないと思いますが、私が事故を起こしたわけしゃないので…」
派遣会社「そこにいた君にも責任はあるんだから、とにかく明日遅れずに行って謝って、余計なこと言わずに仕事をして下さい」
私「…善処はします…」
派遣会社「よろしくお願いしますよ」

このような会話で話は終わった。
事故後にはこれまても数回電話していたが、何度説明しても私が事故を起こして言い訳していると決めつけているようで、毎回このような感じで言われていた。
立場が立場だというのは分かるのだが、私はただ信号待ちをしていただけで事故に巻き込まれ、それが何故私が事故を起こしたようにされるのかがどうしても納得いかなかった。

動きの悪い左腕のまま、首にも激痛を抱えたまま、明日から仕事に戻る。
どうか医師の言うように、単に体が鈍っているだけであるようにと、私は願っていた。

再度の診察

事故翌日の診察から1週間、再度診察に八戸赤十字病院に訪れた。
今回も長い時間待たされたが、それでも前回よりはいくらか早く10時過ぎに診察室に呼ばれた。

医師「1週間経ちましたがどうですかな?」
私「やはり左の方…首、肩、腕が痛いんです。1週間前よりも痺れも増して動きも…」
医師「だからそれ、関係ないから」
私「でも事故後にこうなって、左腕の痺れも小指側から肘まで朝から晩までずっとあるし、腕も上がらずうまく動かせないんです」
医師「でも事故直後には言わなかったよね?あの時痛かったの右の首だけだよね?」
私「それはそうですけど…その時にはそうだったんですから…それがその後に痛くなっておかしくなって、事故の以前には一度もそんなことはなかったんで事故のせいとしか思えないんですが…」
医師「君さ…あの事故で一番軽症なのになんでそんなこと言うのかな?隣の車に乗っていた子供なんてね、骨折したんだよ、骨折。一番軽症なのにそんなこと言って、その子にかわいそうじゃないの?」
私「…でも左が私は痛いし動く範囲も狭くなってるし、全部事故後になったんですよ?」
医師「だから軽症なのにそんなこと言って、他の患者がかわいそうじゃないんですか!?」
私「…ても痛いんです…」
医師「それは事故後に体を動かさずにいたから体が鈍っているだけだからね」
私「…」
医師「とにかく明日から仕事行ってみてください。最初は痛かったりするかもしれないけれど、少しぐらい辛くても体が動かせばすぐに元に戻るから」
私「痛くても無理してでも動かした方がいいんですか?」
医師「君の場合は軽症だからね」
私「…分かりました…」

こうして事故翌日から1週間後の診察が終わった。問診だけで、その問診も私の言葉は全て否定され続けて…。

私は医療のプロではない。
そして交通事故やその後遺症などに明るいわけでもない。
だからその時、医師の言葉に不安を覚えつつも信じてしまった。その通りなのかも知れないと期待してしまった。

車をどうするか

これから車をどうするのか、いろんな人に言われた。

まぁそもそも相手の任意保険がどこまで対応してくれるか次第だと思うのだが、ディーラーも実家も相手の任意保険教職員共済までも急かしてくる。

ディーラーはこう言う。
「修理するか買い直すかで違ってきますし、パレットは発売されたばっかりの車なので部品確保も大変なので、早めに決めていただけると助かります」
理屈は分かる。

実家はこう言う。
「じいちゃんとばあちゃんを病院に連れていくのにどうするんだ?かわいそうじゃないか」
こちらことなお構いなくで実家の都合だけか。

教職員共済はこう言う。
「金額を早く決めていただかないと困るんです」
こっちが都合を合わせないといけない、みたいな感じに聞こえた。

ぞれぞれ都合も主張もあるだろうが、こっちとしても大問題をクリアしていない以上はなかなか決断出来ない。

病院も誰もかれもが私を軽症扱いするけれど、この時点で私は運転が難しい上体になっていた。
左腕が肘の高さ程度しか上がらないのだ。
腕を下ろした状態では肘が90度曲がるが、伸ばした状態で腕を上げると下ろした時の肘の高さに手が到達するとそれ以上は上がらない。その状態だと肘も曲がらない。
正直私は悪化していると感じていた。

車を買っても代金を支払うのは私だ。
もし仕事が出来ないなら車など買えない…収入なしでは支払えないから。
もし今の仕事が出来ずに転職となれば、その職での支払い能力に合わせてまた車を選ばねばならない。
もし今の仕事に復帰できてもこれまでと違う状況…時間短縮や病院通いでの出費増があれば、やはり買う車を選ばねばならない。

結局、この時点での車購入は保留した。まずは事故から1週間、再度診断してからの話だと私は考えた。
まだ希望を覚えていたころの話だ。

仕事中に転んだ、その後に

仕事中に転んだ。
消毒作業中に他の機械を置いてあることに気付いていて足の感触で確認するつもりで後退していたのだが、左足に触感がなかったらしく機械に触れていることに気付かずそのまま機械の上に転倒。
幸い今日は左手が動くことが出来て手をつくことが出来、しかも手をついても発作が出なかったため、機械も壊さずケガもせずにすんだ。

私は左半身の感覚が薄い。
発作が出る箇所だけ異常に過敏だが、それ以外は触感が薄い。
圧力は分かるが、触感は薄く、温度も感じなかったり感じても数秒タイムラグがある、そんな状態だ。

この前も気付いたら左足の甲に穴が空いていた。500円玉ほど大きさで深さは2mm程だろうか。仕事着に着替える時に履いた靴下の手に伝わる感触に違和感があり、見てみたらその状態だった。
それに痛みはない。液体絆創膏を塗っても何も感じない。表面がひんやりした感じはちょっとあったかな…でも普通はとんでもない染みる激痛がくるはずなのにそれがない。
誇張抜きで左足が死んでいるのではないかと思うことがある。
事故の後遺症の治療(リハビリ?)で電気治療をする時にも、左足は感じない。指先が電気で動き始めたらやめる、そんな感じだ。

そう言えば前にテレビで、手で触った感触がある遠隔操作のマニピュレータを見たことがある。
たしか圧力と振動と温度を感じ取れれば実際い触っている感触が再現できるとか…
それを見て「私はきっと振動を感じていないんだな」と思ったのを記憶している。そういうことなのかもしれない。

とにかく、午前中に転倒したものの怪我もなく機械も壊さずに済んで良かった。

と思っていたら、午後に同僚が左肘にぶつかって左腕に発作、痺れが広がり動かなくなってきた。
そして別の同僚が左腕の外側に接触、腕は曲がらない、指先も閉じられない、腕全体が冷えて痺れと痛みで休憩を余儀なくされた。
どちらも軽く…例えるならば小さい消しゴムをヒョイと投げてぶつかったぐらいの衝撃なのだが、当たりどころが悪いとこうなってしまう。
どっちの人も悪気はなく、いやそれどころかぶつかったことすら気付いていないだろう。私は私で大げさに痛がったり騒いだりする人を気持ち悪いと思うもんだからそんなこともしないし…

悔しい。
ただただ悔しい。
加害者は起訴され裁判を受け判決を受けて刑を受ければ免罪符を得たように、許されたかのように、何事もなかったように振る舞う。
でも被害を受けた側は延々と、人によっては死ぬまで傷付けられ続ける。まるで加害者の愚行のツケの一部を被害者が背負うかのように。

ただただ悔しい。

加害者が親同伴でやってきた

加害者から電話があった。
会いたいということだったが、こちらは体調が悪く会う気にはなれない。
しかし親も実家から来ているということなので、どうしても会って欲しいとのことだった。
仕方なく、家の近くの路上で会うことにした。

加害者の親は息子の事故の謝罪のため、弘前から八戸まで駆けつけたとのことだった。

加害者の父親と母親が謝罪の言葉を口にし、深々と頭を下げる。加害者本人もそれに倣う。
そして菓子折りを渡そうとするが、私はそれを受け取らない。そして

「謝罪も大事とは思うが、現状を回復してもらうこと、それが私の望みだ」

私はそう言った

もちろん事故の前の状態になるように必ず息子にやらせますので、と父親が頭を深く下げ、母親も頭を下げる。
そして父親は息子に向かって、この人に追わせた被害を必ず回復するように、例え自分がどんなに辛くともと、どんなことをしてでも償いをするように約束しろと強く言った。
加害者は頷き頭を下げる。

この時の私はその姿を見て、愚かにも加害者とその親を信じてしまった。

加害者は20代半ばの男性で、職業は教師。
八戸市立の中学校の教師で公務員。若いとはいえ地方都市での公務員のと言えば十分な給与をもらっている立場にあり、同世代の民間企業に勤める者よりも金銭的には裕福であることが多い。
仮に相手側の任意保険でカバーしきれなくても、少なくとも同世代の人よりは金銭的に何とかしてくれるはずだとそう思った。
おまけに親まで出てきている。成人した子供の罪のためにわざわざ駆けつけ頭を下げ、こちらの目の前で約束させたのだから、これでもし今後、私の身体の傷が治らない場合でもなんとかしてくれると、私は信じてしまった。
それは身体に関しても必ず治させるとを加害者の父親が約束したからでもある。

菓子折りを受け取り、私はその場を後にした。
加害者の両親は何度も何度も頭を下げていた。
もし、あの時の加害者の親の言葉が本当のもので、私が十分な被害回復を受けられていたら今より少しはマシな状態にあるのではないかと、そう思うことは少なくない。