不足分10万円

数日後、加害者に直接会って車の精算の不足分10万円を受け取ることとなった。

加害者「10万円用意してきました」

と封筒を差し出す。
受け取ろうとする私に加害者は言った。

加害者「お願いですからこれ以上請求しないで下さい…私だってもうお金無いんですよ…」

何を言っているのだろう、と思った。
お金がないのはこちらも同じだ。
いや、むしろ、自身の行動で事故を起こした加害者の金が尽きるのは自業自得でも、こちらは加害者の行動によって仕事も失い健康も害して、あげく過失ゼロなのに10万円を背負わされ掛けている。言うなれば「お金無い」はこっちのセリフだ。
だからそれを加害者が保証するのは当然であり、仮にそれで加害者自身が困窮したとしても被害者を優先するのは当たり前ではないのか?
それをまるで…これでは私がタカリか何かをしているかのようではないですか…なんでそんな言われようをされねばならないのだろうか…

私「そちらの犯した事故でこうなっているって分かってますか?」
加害者「それは分かっていますけど…」
私「別に過剰に請求しているわけではないんですよ。あなたのベルファイアが追突して廃車にするしかない私のパレットを精算して、自力で車を買い直すと言ってるんです」
加害者「でも…」
私「あなたが教職員共済が全て面倒みると言ったけどそうはならなかった。だから足らない分をお願いしたんじゃないですか?あなたも私の言い分に納得したからお金を用意したんですよね?」
加害者「…」
私「本当なら修理会社が特別に買い取ってくれることになった5万円だって、あなたが払って当たり前じゃないんですか?車が廃車になったのはあなたのせいなんですから…それなのになんで私が『たからないでくれ』と責められるんですか?」
加害者「分かりました、分かりましたから、まずは受け取って下さい」
私「不当に請求はしませんが、」
加害者「」

納得してはいないが、ひとまず封筒受け取り中身を確認する。

加害者「ですがなんとかこれ以上の請求は…」
私「…約束はできませんよ。教職員共済が保証してくれず足らない場合には相談するしかないですよね?教職員共済もあなたに相談してくれと言っていますし…それともあなたの犯した被害のツケを私に背負えと?」
加害者「それはそうですけど…僕ももう本当にお金がないんですよ」

これ以上話しても無駄なようだ。
そこで私はケータイのキャリアの変更に話しを振った。少しでも節約して無駄金を減らして欲しいと暗に提案するつもりで。

「ところでケータイを、ウィルコムにしてみるつもりは?」
加害者「え…でも番号変わると困るし…」
私「そんなの連絡すればいいだけてしょ。それに2台持ちで併用するだけでも君の場合は月に5000円は安くなるはずだよ」

以前、加害者とはケータイの話をしたことがあり、通話多用なのを知っていたための提案だ。
しかしどうにもしっくりこないようだ。表面上話を合わせて同調しているだけで、節約する意思がないように思われた。
事実、その後キャリア変更や2台持ちした形跡はなく、車も安いものに買い換えることもなく修理して使うという話だった。

結局、自分の生活を切り詰めるつもりはなく、被害者に保証すべき部分を減らして賄おうとしているように思えた。

だからどうしても訊きたかった質問をした。

私「ところで仕事は大丈夫なの?公務員で事故はまずいでしょ?」
加害者「なんとか同僚には隠し通せそうなんで…」
私「そっか、隠すんだ…でも生徒は?中学生の生徒たちにはどう説明するの?」
加害者「もちろん隠します!絶対にバラしません!!」
私「…」

この言葉は私にはとてもショックだった。
当たり前と言えば当たり前のことかもしれない。誰も自らの非を晒したくはないだろうし、隠せるものなら隠したいのかも知れない。

しかし中学教師がそれをするということは、生徒たち「人に被害を与えても逃げればいい、責任など取らずに知らんぷりすればいい」、と言っているように思えた。
当時、私の子供が中学生だったこともあり、私は彼の言葉を理解することが出来なかった。

結局、保証すると言ったのも反省したように見えたのもフリだけで、だから警察にも嘘の自供をし、被害者をタカリ呼ばわりして自分の財布を守ることに躍起なのだ。
そう思えた。

この日以降、加害者は一度も私からの電話には出れくれていない。
やはりそういう考えの人なのだろうと思った。

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